月と夕焼け
突然、そう聞かれて、けれど私はすぐに答えることができた。


「恋人として、一日中遥佳様を独占したいです。買い物も、食事も、私は遥佳様だけを見てて。遥佳様も私だけを見てくれてる」

「素敵よ」

「いつもは私が入れてる紅茶を、遥佳様に入れてもらいたいです」

「紅茶?」


美乃梨様は不思議そうに聞き返される。
私は妄想しながら、幸せを感じて一人で笑う。


「入れ方が違うよ、なんて、遥佳様に言いながら2人でゆっくりティータイムを過ごすんです」


そこまで言って、急に切なくなる。
涙がこぼれそうになった。


「そんな、幸せな一日を…過ごしたいです」

「佳奈ちゃん…」

「まぁ、こんな私の妄想は痛いですよね。すみません、美乃梨さん。私もう寝ますね」


電話を切って、さっきの妄想を思い出す。
幸せが痛くて、涙が出た。

旦那様たちにバレなければ付き合える?
そんな仕事を辞めさせられるリスクを侵すなら、私はどんなカタチでも遥佳様の側にいられる方を選ぶ。
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