パステルカラーの恋模様 【鮫っち番外編】
「何か歌って」
俺は思わず腰をさげたまま顔をあげて、「へ?」と答えた。
美紀はいつもの調子で俺をひっぱって、「何ぼーっとしてんの。ほら、早く」と言った。
「あ、ああ…」と俺は状況がイマイチ飲み込めない。
俺は言われるままにベンチに座って、ギターをセッティングし、ピックを握った。
美紀はどかっと俺の隣に座り、黙って聴いた。
俺は初めて自分で作ったバラード…といきたい所だが、俺の持ち歌であるバンドでがちゃがちゃ歌う用の、青春ラブソング、ロックバージョンを歌い上げた。
あー、こうして聴いてみると、下手だなぁ、俺。
でもごちゃごちゃ言ってる場合じゃない!
ボーカルは俺の担当じゃないけど、ちゃんと歌える。
歌い終わって横を見ると、美紀はなぜか号泣していた。