雨あがりの空に
それから俺は、拓海を幼稚園に送り、会社に向かった。

今日はいつもより遅れてしまった。


「…遅れてすみません」

静かに社内に入る。

「おぉ、仙崎君じゃないか!…家の方は大丈夫か?」

社長が俺の方に駆け寄ってきた。

「すみません、社長。…妻が倒れてしまって…」

「…大丈夫なのか?奥さんは…」

「…はい、一週間の入院ですが体の方は大丈夫です。お騒がせてすみませんでした」

「そんないいんだよ。大変だったね」


社長はポンッと俺の肩に手を置いた。


俺は、自分の席に座って作業に取り掛かった。

書類をまとめたり、プログラムを作成したり。


「…仙崎先輩…」

「…ん、あぁ…前田さん。どうした?」

遠慮がちに俺に話しかけてきた人は、前田由里子。

俺の一つ下の後輩。昨年に入社したばかりだ。
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