雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
「まだそんなこと……契約が果たされない限り、ボクはお前のものにはならない! ボクを喰いたければ今すぐ殺して、十六夜のために神を目覚めさせろ……それが条件だ!」
「……無駄だ」
数拍の沈黙のあと、雪がポツリと漏らす。
「なにが無駄なんだ! ボクが鍵なんだろう? だったら――」
いきなり強い重圧が身体を締め付けた。
先刻までとは比べ物にならない速度で景色が変わる。
息ができないほどの風圧に晒され、月夜は目をまわした。
『――もう、争いはたくさん……わたしがいなければ、こんな戦いも起こらなかった……』
何者かの囁きが、月夜の意識を目覚めさせる。
目を開けると、真っ白に塗られた世界で、ポツンと独りたたずむ影があった。
そちらに引き寄せられるように脚を動かそうとして、自分が肉体を持たない状態であることに気づく。
ふわふわと漂いながら、月夜は影に近づいた。
『仲のよかったあの子たちを狂わせたのも、我が分身を失ったのも、すべてわたしのせい……せめてこの国が、いつまでも豊かで、穏やかであるように。そのために、わたしはこの国の礎になることを選んだ……』
影が顔をあげ、月夜を見る。
この世のものではない、恐ろしく整った美しい容貌。
髪は白銀に光輝いて、地平線にまでのびている。
瞳は深い紫色をした宝玉のように曇りがない。
「あなたは――」
『須佐乃袁(すさのお)……天から追放された、愚かな神だ』
「では、あなたがはじまりの神?」
月夜は須佐乃袁の傍にひざまずいた。
『そなたは……ミトラと同じ匂いがする。けど、朱雀の色……そうか。そなたが』
須佐乃袁は、哀しげで儚い笑みを浮かべた。
「……無駄だ」
数拍の沈黙のあと、雪がポツリと漏らす。
「なにが無駄なんだ! ボクが鍵なんだろう? だったら――」
いきなり強い重圧が身体を締め付けた。
先刻までとは比べ物にならない速度で景色が変わる。
息ができないほどの風圧に晒され、月夜は目をまわした。
『――もう、争いはたくさん……わたしがいなければ、こんな戦いも起こらなかった……』
何者かの囁きが、月夜の意識を目覚めさせる。
目を開けると、真っ白に塗られた世界で、ポツンと独りたたずむ影があった。
そちらに引き寄せられるように脚を動かそうとして、自分が肉体を持たない状態であることに気づく。
ふわふわと漂いながら、月夜は影に近づいた。
『仲のよかったあの子たちを狂わせたのも、我が分身を失ったのも、すべてわたしのせい……せめてこの国が、いつまでも豊かで、穏やかであるように。そのために、わたしはこの国の礎になることを選んだ……』
影が顔をあげ、月夜を見る。
この世のものではない、恐ろしく整った美しい容貌。
髪は白銀に光輝いて、地平線にまでのびている。
瞳は深い紫色をした宝玉のように曇りがない。
「あなたは――」
『須佐乃袁(すさのお)……天から追放された、愚かな神だ』
「では、あなたがはじまりの神?」
月夜は須佐乃袁の傍にひざまずいた。
『そなたは……ミトラと同じ匂いがする。けど、朱雀の色……そうか。そなたが』
須佐乃袁は、哀しげで儚い笑みを浮かべた。