砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 毬は真剣に書物を読み漁っている。
 
 不意に、猫たちが外へと歩き出した。
 毬の手の中にいた慣れた黒猫さえも、するりとそこから逃げ出していく。

 毬はそれにも気づかないくらい真剣に、書物から目を離さない。

 早く――、早く、見つけないと。

 そればかりが頭を駆け巡っていて。
 目が文字を上滑りしていく。
 手のひらに、また、汗がにじむ。



 だから。

「ただいま、毬。
 楽しく留守番していたようだね?」

 と、いつもどおり艶やかな声が頭上で響いてきたときには、声も出ないほどに驚いたのである。

「龍っ」

 弾かれたように顔をあげた毬の瞳は、今にも涙が零れそうなほど潤んでいる。

「私……」

 その場から逃げ出しそうになる毬を捕まえて、強引なほど強く抱きしめた。

「猫は皆、きちんと元居た場所に返したから。
 心配しなくて大丈夫」

 怒ることも咎めることもなく、龍星はただ優しくそう囁く。

「怖い思いをさせて、すまなかった」

 謝る前に謝られて、毬は言葉を失ってしまう。
 顔を上げると、黒曜石を思わせる綺麗な瞳が、今は哀しそうに毬を見つめていた。

「違うの、龍のせいじゃなくって。
 私がっ」

 まだ、風からは獣の匂いが消えない。
 龍星が大切に育てていた庭の草木も、踏み荒らされたに違いなかった。

 自分の囁いた一言が、大事を招いてしまったことを。
 毬は心から悔やんでいた。

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