砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 しばらくすると、家の中にまで牛車が乗り付けてきた。

 ひょい、と身軽に雅之が飛び降りてくる。

 戸惑いながら出迎えた毬に、人好きのする笑顔を浮かべ

「猫に襲われなかった?」

 と、無遠慮に、しかし優しい口調で聞いた。

「あ、あの」

 言い訳をしようとする毬の髪を、くしゃりと撫でる。

「怪我がないなら何よりだ。
 客人をご案内しよう」

 雑談の間にすばやく周りを見回し、取り立てて視線のないことを確認すると顔を隠した客人を、そのまま屋敷内へと案内した。

 毬はその後を追って屋敷内に入る。

 客間に通されたその人が、ようやく布を取った。
 毬より少し年上に見えるその人は、まだあどけなさの残る少年の顔を沈痛の面持ちに歪めていた。

 華が用意してくれたお茶を啜りながら雅之が言う。

「すでに噂になってたぞ、猫屋敷だって」

 毬が口を開く前に、龍星が形の良い唇で弧を描く。

「それはいい。俺も猫は好きなほうだ」

 そういうと、名も知らぬ客人を前にどう振舞ったらよいか決めかねている毬を、そっと隣に招いた。

「互いに、ここでのことは内密に」

 龍星が、ことさら心に沁みる低い声で言う。
 少年は、真剣な面持ちでこくりと頷いた。
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