砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 牢の周りには、じめっとしたいやな空気が漂っていた。

 その真ん中で、まるで死んでいるかのように、年老いた右大臣が横たわっている。
 干からびたキツネを思わせるような寝姿に、帝はぞっとしない表情で顔を背けた。

 龍星は、眉一つ動かすことなく袖の中から五芒星を記した半紙を取り出す。

 それを牢の前に貼り、細い指先を紅い唇に当てて短く呪を唱え、その手で印を結んで何かしらの結界をその牢の周りに張った。

 次に、自分が立っていたところに一つわら人形を置いた。

 そして、数歩下がってその様子を唖然と見つめている帝に声を掛ける。

「お手数ですが、このわら人形を信頼できるものに見張らせてください。
 そして、これに何かしらの異変があったらすぐそれを持って、例の屋敷に向かうよう命じていただけませんか?」

「それは、危険を伴うのか?」

「いいえ。
 危険なことは何も。
 ただ、確実に屋敷に届けていただければ良いだけです」

 帝は、一瞬何かを逡巡するかのように唇を噛んだ。

 直後。

「私がやろう」

 と、軽い口調で答えた。

 龍星の視線が険しくなる。

「いけません。これは、帝の手を煩わせるようなことではありません」

「何故?
 私は今、一介の検非違使だ。
 危険もないんだろう?
 任せてみろよ」

 帝は口調は軽いが、その瞳は強く真っ直ぐで、一歩も引く気はないようだった。
< 416 / 463 >

この作品をシェア

pagetop