ミックス・コーヒー
「はい、お母さんが亡くなってから、あたしは親戚の家の養子になって。優しい人達だったけど、お父さんのことは気に入らなかったみたいで、ずっと会わせてもらえなかったんです……美葉にさえもね」

 ミクリが笑う。が、やはりどこか悲しげだ。

「そういえば、筏のおじさん達は?」

「二人ともちょっと前に亡くなっちゃったよ。随分歳だったしね」

「そっか……」
 美葉が少し顔を伏せた。

「やっと美葉に会えると思って、古亭路の家に行ったら、美葉が家を出たって聞いて……」

「それって、いつぐらいの話?」

「一年くらい前かな」



 美葉は言葉に詰まってしまった。

 父は、娘を閉じ込めているなんて、とてもではないが言えなかったのだろう。
 だから、嘘をついたのだ。
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