ミックス・コーヒー
「すごく嬉しいんです。尚樹さんの前では、普通の女の子に戻れる気がして」

 ミクリは、芸能人になりたくてなったわけではなかった。
 それは、昨日話に聞いたとおりだ。

 彼女は、美葉や両親の為に<普通>を捨てたのだ。


「じゃあ、尚樹さん、じゃなくていいよ」

「え?」
 驚いて、ミクリが尚樹を見る。
 その視線は、しばらく重なり合っていた。

「……もっと適当に呼んでくれて全然いいから。堅苦しいし」

「……そんな、でも……」

「ほら、早く」


「ええっ? はい! んな……尚樹、くん」


 二人は、なんだか照れくさそうに、笑い合った。
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