ミックス・コーヒー
「たぶん、これもあたしたちのためを思ってやってくれてることなんだと思うよ……」
 ミクリの表情は真剣だった。

 美葉は思わず視線を下ろした。

「……そういえば、沢下さん、川村と話できたかな。あれから二週間は経つよな」
 貴之が腕を組む。

「どうだろうな。話くらいはできたんじゃねえかな。ただ、沢下さんが顔を見せないところを見ると、進展はしてなさそうだな」
 尚樹が首を傾げながら答える。



「……その、川村っていう人がいろいろ知ってるはずなんだよ。絶対」

 ミクリの声が、いつもより低く響いた。

 そんなミクリが心配で、尚樹は優しく彼女の頭を撫でる。

 すると、ミクリはすかさず、微笑みを作って尚樹の顔を見上げた。


 その笑みはやはりどこか悲しげで……尚樹の胸は締め付けられ、痛んだ。
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