ミックス・コーヒー
   ③

「10時過ぎたな」
 尚樹が掛け時計を見て呟く。

「まだ、ミクリから電話来ないな」
 三人分のコーヒーカップを片付けながら、貴之も時計を見る。

「たぶん、もう家に帰ってるはずなんだけど……遅いな。おれ、一応もう帰るわ」
 尚樹が立ち上がる。

「おう。マネージャーと鉢合わせになんなよー」

「ああ、気をつけるよ。陰からこっそり近づくわ」

「……変質者に間違えられんなよー」



 外に出ると、夜特有の乾いた風が尚樹の肌を撫でた。

 今夜の風は生温くて、少し気分が悪かった。
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