ミックス・コーヒー
「私も来て、良かったんでしょうか」
 同じくキッチンで、恐縮気味に言う、吉本。

「吉本さんには、ぜひ、いてもらわないと」
 同時に、椅子から立ち上がり、エプロンの紐をしっかりと結び直す、貴之。

「しかし……まさか、ここで<あの男>を問い詰めることになるとは。シゲさん、本当に大丈夫なんでしょうか?」

「署内だと、俺もそうだが、タカちゃん達も、アイツを直接追い詰めることができないからな。証拠もかなり揃った。まさか、この二日間でここまでわかるとはな……。専門的なことはお前に任せるからよ、沢下。そこは、いつもどおりにやってくれ」

 はい、と神妙な面持ちで頷く沢下。

「瀬戸! お前はさっさとしゃがめ! そのデカイ図体をしっかりと隠せよ」

 シゲが声を上げると(実はシゲの方が図体はデカイ)、瀬戸は「やれやれ」と声を漏らしながら、足をたたんだ。
 吉本もそれを真似て、床に膝をつける。
 
 瀬戸と吉本の姿は、カウンターの後ろにすっぽりと隠れた。
< 272 / 366 >

この作品をシェア

pagetop