モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~

略取―沙羅

姉の姫乃が帰ってしまうと、
それほど時間をあけずに、
どこからともなく白い
毛長猫が現れた。

朔夜の猫だ。

地主の屋敷で、盗み聞きを
したとき以来、有事の際に
役に立つからと朔夜が
置いていってくれた。

ミルクを飲むかと尋ねれば、
欲しがるように鳴くので、
沙羅は浅い器にミルクを
入れて差し出す。

とても上品にミルクを
飲みほした猫は、
沙羅に甘えるように
身をすりよせてきた。

沙羅は微笑んで、ベットの
下から朔夜にもらった
専用のブラシを取り出す。

慣れた手つきで毛並みを
とかすと、猫は気持ち
よさげにため息をついた。
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