モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
「…?黎明?どうかしたの?」

沙羅の問いかけにも反応を
示さず、じっと何か
警戒するように様子を
うかがっている。

「…。」

どうしたらいいのか
わからずにいる沙羅を
よそに、黎明は唐突に
毛を逆立て、威嚇を
始めた。

「黎明!?」

沙羅が落ち着かせようと
触れるより速く、黎明は
沙羅の衣服を口で引っ張った。

そうして、すぐさま駆け出し、
窓の隙間から出て行ってしまう。

少しの間ぽかんとしていた
沙羅も、慌てて追いかけようと
家を出た。

森の中の一番大きい道から
逸れた脇道に、白い影が見える。

脇道を走りぬけていく
白猫の後ろ姿に続いて、
沙羅も走る。
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