モントリヒト城の吸血鬼①~ヴァンパイアの花嫁~
これ以上は何を言っても苛立ちが
増すばかりだと思ったのだろう。

凍夜に背を向けて、ノークスが
立ち去ろうとする。

「…僕も行く。」

「!?」

「キミが怒りにまかせて大事な餌に
危害を加えないとも限らない。」

「…最初にあの娘を連れ込んだ時、
交わした条件は守ります。」

「…。」

凍夜はじっとノークスを見つめる。

確かに彼の性格上、最初に交わした
「娘に危害を加えない」という条件は
守るだろうが。

「…僕も行く。」

なぜかはわからなかったが、
姫乃と他の男が二人きりになるという状況は、
非常に不愉快な気がしてならない。

「…邪魔だけはしないでください。」

口論が時間の無駄だと悟った
ノークスが、ため息交じりに呟いた。
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