小さな恋の虹〜キミと描く夢〜
「ダイビングの講師」
稔くんが言うと、周りから「いい夢だね」と声が上がった。
薄い灰色の雲がゆっくりと流れていき、ちょっとふっくらしている三日月を隠す。
「兄ちゃんは?」
弟の稔くんから、兄の圭へバトンタッチ。
圭は少し頭を上げ腕の枕の位置を整えると、静かに呼吸をして口を開いた。
「医者」
パァっと、灰色の雲が三日月から離れていく。
圭の横顔を月の光が照らしだし、とても柔らかく見えた。
「俺でも助けれらる命があるなら、どうにかしたい」
圭……。
いつからその夢を抱いていたんだろう。
ずっと隣にいたはずなのに、圭の夢を聞いたのは初めてだ。
自分から進んで言うような人じゃないし……。
圭が医者、か……。
お母さんの為にネットで色々調べて神頼みをしたり、将来の夢まで持っていたなんて。
幼なじみでも、知らないことって、いっぱいあるんだ。