光のもとでⅠ
「まだ零樹と碧を解放してあげられないんだ。今回の仕事には色々とイベントを絡めている事情もあって、かなり急ピッチで進めているものでね。現場の統括には零樹が立っているし、碧には建物全体のインテリアを任せているから、ものを集めるために度々海外へも飛んでもらっている」
「あ……その話はメールで聞いています。この期間は日本にいないとかいるとか、お土産楽しみにしててねって」
 静さんは破顔した。
「碧らしいな。出張先で娘にお土産か。この忙しい中でも省かないあたりがちゃっかりしている」
 そんなふうに言われるくらいには忙しいのだろう。
 そう思っていると、
「今は零樹や碧よりも私のほうが融通がきくだろう。だから、何かあれば連絡しておいで?」
 そうは言われても、どんなことがあったら静さんに連絡することになるのだろう。
 単に相談に乗ってくれるという意味なのだろうか。
 考えていると、徐々に頭に霧がかかってくる感覚に襲われる。
 マンションまであと十メートルくらいなのに……。
 あ――これは静さんに言わなくちゃだめ?
「……静さん、目の前が……体の力が――」
 抜けちゃう――。
< 1,023 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop