光のもとでⅠ
 私、今どこにいるんだろう……。
 横になっているのはわかるし、それがお布団の上であることもわかる。
 目を開けて、病院のグリーンのカーテンが目に入ったら嫌だな……。
 でも、薬品の香りはしない――。
 カチカチ鳴っている音はなんだろう。時々、タンッ、と小気味いい音がする。
 あ……パソコンのタイピングの音?
 でも、蒼兄のそれとは速さが異なる。強いて言うなら秋斗さん寄り……。
 はっとして目を開けると、目に飛び込んできたのは今朝と同じラベンダーカラーだった。
 そして、デスクに向かっていたのは唯兄だった。
「……唯、兄?」
 色々状況が呑み込めない。
「起きた?」
 振り返った唯兄に声をかけられる。
 ……えぇと、思い出そう――。
 学校を出て、静さんと一緒に歩いていて、気が遠くなって、起きたら今……。
「唯兄……私、静さんと歩いていたんだけど、途中で気が遠くなってしまって、起きたらここにいたのだけど――」
「うん、まぁそんなところだろうね」
 と、言いながら首を傾げる。
「ちょっと待って。起きたらオーナーに声かけるように言われてるんだ」
 そう言うと、カタカタとキーボードを打ち始め、「送信っ!」と言いながらエンターキーを押した。
 その数分後にはドアがノックされ、静さんが入ってきた。
< 1,024 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop