光のもとでⅠ
「気分はどうかな?」
「なんともないです……あの――」
「さっきみたいなことはしょっちゅうあるの?」
 "さっきみたいなこと"とは意識を失ってしまうことだろうか。
「すみません、静さんと話ていたら気が緩んでしまったんだと思います。そしたら一気に薬の効果が出てきてしまったみたいで……」
「急に倒れるからびっくりした。でも、湊から多少は聞いていたからうろたえはしなかったけど。車で迎えに行けば良かったかな」
 静さんは言いながらベッドに腰を下ろした。
「……ご迷惑をおかけしてしまったけれど、ずっと外を歩きたいと思っていたので、外を歩けて嬉しかったです……」
「翠葉ちゃん、迷惑じゃないよ? 今は親代わりだ」
 意識を失う前に話したことを改めて言われる。
「オーナー、それ図々しいですよー?」
 唯兄が部屋の隅からチクリと言葉を発する。
「若槻だって御園生兄妹に加わっているのだろう? 親がひとり増えるくらいどうってことはないだろう?」
「いや、そういう問題じゃなくて……。第一自分のはリハビリですから」
 ……えぇと……。
「家族が増えるのは嬉しいですよ?」
 私が口を挟むと、ふたりが満足そうに笑ったので少しほっとした。
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