光のもとでⅠ
するとノックの音が聞こえ、
「失礼いたします」
と、蔵元さんが入ってきた。
「静様、お車の用意が整いました」
「あぁ、わかった」
立ち上がった静さんは、私を迎えにきてくれたときの服装とは違って、しわがひとつもないスーツをびしっと着ていた。
ワインレッドのネクタイが格好いい。
ネクタイピンのネイビーとゴールドの組み合わせは手元のカフスとお揃い。
一見派手に見えそうな色使いなのに、華やか以下に見えるのはどうしてだろう。
そんなことを考えていると、
「では、仕事に行くかな」
と、手を取られた。
「いいかい? どんなときでも翠葉ちゃんからの着信は取ると決めているんだ。だから、何か困ったことがあったらすぐに電話しておいで」
さっきと同じように手に力をこめられ、それはすぐに放された。
静さんの大きな背中を目で追っていたけれど、ドアが閉められて見えなくなる。
「オーナーって絶対リィに甘いと思う。なんていうか、目に入れても痛くないって体中に書いてあるの見えたっ!?」
私に文字は見えなかったけれど、でも、すごく気を遣われているのかな、とは思った。
そんな必要はないんだけどな……。
「失礼いたします」
と、蔵元さんが入ってきた。
「静様、お車の用意が整いました」
「あぁ、わかった」
立ち上がった静さんは、私を迎えにきてくれたときの服装とは違って、しわがひとつもないスーツをびしっと着ていた。
ワインレッドのネクタイが格好いい。
ネクタイピンのネイビーとゴールドの組み合わせは手元のカフスとお揃い。
一見派手に見えそうな色使いなのに、華やか以下に見えるのはどうしてだろう。
そんなことを考えていると、
「では、仕事に行くかな」
と、手を取られた。
「いいかい? どんなときでも翠葉ちゃんからの着信は取ると決めているんだ。だから、何か困ったことがあったらすぐに電話しておいで」
さっきと同じように手に力をこめられ、それはすぐに放された。
静さんの大きな背中を目で追っていたけれど、ドアが閉められて見えなくなる。
「オーナーって絶対リィに甘いと思う。なんていうか、目に入れても痛くないって体中に書いてあるの見えたっ!?」
私に文字は見えなかったけれど、でも、すごく気を遣われているのかな、とは思った。
そんな必要はないんだけどな……。