光のもとでⅠ
『そうだよね』
 電話の向こうで、翠はその言葉を額面どおりに受け取った。
「でも、俺も話せて良かった……。録音してあるのを聞くのと、リアルタイムで話せるのはやっぱり違うな……」
 こんな言葉じゃ俺の言いたいことは伝わらない。
 だから、このくらいなら言っても問題はない。
 携帯からは「うん……」と声が届いた。
「そっちは星が見えるか?」
『え?』
 携帯ゾーンにいるなら星が見えるだろう。
『見えるよ。白鳥座とか』
 屋上で話したときの記憶が浮上する。
「……夏の大三角形は?」
 覚えてないだろうな、と思いながらも訊いている自分がいる。
< 2,428 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop