光のもとでⅠ
 暑いけど、人ごみの中で息が詰まる感じとは違う。
 外には風が吹いていた。
 さすがに桜林館で決勝戦をやっているだけあって、テラスに出ている人も少ない。
 いや、この暑さだからだろうか……。
「翠葉」
「ん?」
 隣を歩く長身の海斗くんを見上げる。
「怖くなかった?」
「……さっきの話の続きかな?」
「そう。呼び出し、嫌な思いしなかった?」
 嫌な思い、か……。
「うんと……びっくりした。それから、新鮮だった」
 海斗くんは私の言葉に目を丸くした。
 反応が河野くんと似ている。
「中学ではこういうことはなかったの。面と向かって何かを言われたことがほとんどないんだ。だから、何が嫌だってはっきり言ってもらえたのは新鮮だった」
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