光のもとでⅠ
 俺にとってはどうでも良くて、翠にとっては一大事。
 そんなことが今までにたくさんあったな、と思う。
 今の翠はあのときの俺と同じ心境なんだろうか。
「……泣く?」
「っ……!?」
 訊かれたことにびっくりして顔を上げる。
 翠の目に自分が映っていた。
 今、翠の前にいる自分の顔が瞳に映る。
 目の表面には水分が多め。でも――。
「泣いてない。ただ……少し怖いとは思ってる」
 わけは訊いてくれるな。
 答えられる自信はない。
「……何か嫌みを言うときには藤宮先輩って呼びたいかも?」
 少し笑いの混じるコミカルな言い方。
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