光のもとでⅠ
 誰にも知られたくなかったから、発作が始まるとすぐに席を外してトイレで薬を飲んでいた。
 薬が効くまでしばらく個室にいた。
 薬が効けばなんとかなっていた。
 蒼兄から一度だけ電話がかかってきて、大丈夫か訊かれたことがあるけれど、薬で対応ができる範囲内であることを伝えたら、以来何を言われることもなかった。
 でも――先生がもう飲むなと言ったその一錠がなかったら、私は今の生活を続けられない。
 紅葉祭の準備や歌の練習なんて続けられない。
 なのに――どうしてわかってくれないのっ!?
 なんでわかってくれないのっ!?
 零れ落ちる涙を止めることなんてできない。
 だって、先生にだめと言われてもやめたくない。
< 4,755 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop