光のもとでⅠ
「秋斗、さん……?」
 まだ寝ぼけている状態だ。
「お姫様は王子様のキスで目覚めるらしいよ。拓斗がそう言ってる」
「――きやぁっっっ」
 びっくりして起き上がった彼女は眩暈を起こして俺側に倒れた。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないです……」
 美波さんはお腹を抱えて笑ったままだし、拓斗は目を覚ました彼女に見惚れ中。
 彼女は一気に上気して胸もとまで真っ赤に染め上げた。
 今回は俺の悪巧みじゃないよ? 仕掛け人はそこのおチビさんだ。
 ま、消毒もできたし……俺からしてみたら役得かな?
「紹介するね。こちらが美波さん。そして、その息子の拓斗くん」
 翠葉ちゃんは小さく口を開けて美波さんと拓斗に視線をめぐらせていた。
「おはよう。ぐっすり寝てたみたいね? 美波です。よろしくね?」
「……翠葉です。先日はお世話になりました」
「いいのよ。気にしないで?」
 拓斗は美波さんの後ろから一歩二歩と近づいてくる。
「本当に起きた……。お姫様、始めまして。僕、崎本拓斗です」
 翠葉ちゃんは少し首を傾げて拓斗と目線を合わせた。
「拓斗くん、御園生翠葉です。仲良くしてね?」
 彼女の笑顔に拓斗も花を咲かせたような笑顔になる。
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