光のもとでⅠ
「……俺が知る範囲だと五月半ばから、かな」
「なるほどね」
「約一ヶ月か。意外と耐えてるじゃん」
 若槻が面白そうに喋る。
 ……だから、一ヶ月以上だってば……。
「だって、俺にキス以上のことはしないって言った手前あるし」
 あぁ、蒼樹にも湊ちゃんにもそんなことを言った覚えがある……。
「それ、冗談とかじゃなくて?」
 冗談なんかじゃなかったよ。あくまでもそのときは。真面目にそう考えていたしできると思ってた。……というよりは、もっと早くなびくと思っていた、が正解。
「それ、取り消させてくれる? って言われたのだけど、どうしよう――」
「「はあああっ!?」
 こんなときばかりは正直に口を割る君が恨めしい。
「どうしよう……。お付き合いするのって、怖いね……?」
 そっちにいっちゃったか……。
「相手が悪い」
 若槻も、ズバズバものを言ってくれる。蒼樹は苦笑でも浮かべているだろうか。
「でもね、私に合わせてくれるって言ってた……。それでもすごく怖い……」
 君は"怖い"んだね。だからあんなに怯えた目をしていたんだ。
 君の周りにはいくつの"怖い"要素があるだろう。
 もっと簡単に考えてた。性行為や異性に対する好奇心で受け入れてくれるかと、そんなふうに心のどこかで思っていた。でも、違ったみたいだ。彼女の中ではもっと違うものに模られた領域なのだろう。
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