光のもとでⅠ
「おまじない……?」
 蒼兄は心底不思議そうな顔をする。
「うん、おまじない」
 私はつい笑ってしまう。
 だって、このおまじないは蒼兄の専売特許だったから。
 ずっとずっと、小さい頃からずっと、いつだって私に安心を与えてくれた。
 私は蒼兄の頭に手を伸ばし、軽くポンポン、と優しく叩いた。
「大丈夫だよ」
 蒼兄がクスリと笑みを漏らす。
「おまじない、か……」
「そう。小さい頃からずっと――ずっと、これがおまじないだった。『大丈夫だよ』のおまじない」
 にこりと笑って見せると、蒼兄の手が近づいてくる。
 その手は期待を裏切らず、私の頭を軽くポンポンと叩いた。
「蒼兄、ありがとう……。おまじないもしてもらったから、もう本当に大丈夫」
 そう言って、駐車場で蒼兄と別れた。
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