光のもとでⅠ
 そこに秋兄を連れた木田さんがやってくると、じーさんは嬉しそうに話しだした。
 木田さんは穏やかな表情でじーさんの相手をする。
 会長であるじーさんとこんなふうに話せる従業員はそういないだろう。
 そんなことを思いながら、俺は一定の速度で手元の本をめくっていた。

 木田さんが空になったコーヒーカップを下げると、秋兄がじーさんにボールペンを手渡す。
 それはボールペン型の集音機。
 ICレコーダーという名の盗聴器。
 製薬会社の不正を暴く際に使われたものに酷似していた。
 でも、俺が知っているそれは保存する機能があるだけで、リアルタイムで音声を傍受することは不可能。
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