光のもとでⅠ
 ただ、人の欲とは深いもので、その状況に慣れてしまうと「次」なる欲求が生まれるんだよね。
 彼女は恥ずかしくなったのか、口を手で隠し俯いてしまったけど、できれば顔を上げてこの景色を見てほしい。
「翠葉ちゃん、見て? あの葉っぱきれいじゃない? すっごく美人さんだと思うんだけど」
「え? ……あ、本当ですね。グラデーションになっていてきれい……」
「今日は空が青いから、空とのコントラストもきれいなんじゃないかな?」
 彼女は木の下から空を見上げ、口をポカンと開けていた。
「カメラ、持ってきてるんでしょ?」
 訊くと、嬉しそうに大きく首を縦に振った。
「俺たちはここにいるから、少し写真撮ってくるといいよ。毒虫はいないだろうし、足元が滑りやすい崖側に行かなければ大丈夫。こっちの山側なら問題ないよ」
 そう言って彼女を藤棚の奥へと送り出した。
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