光のもとでⅠ
「暑い? ……冷たいの間違いじゃなくて?」
「冷たいけど熱いのっ」
 もう言っていることが支離滅裂だ。矛盾なんて域は出てしまっているような気がしなくもない。
 でも、困るから。手、つながれていると本当に困るから……。
「……わかった。つまり俺の手は不要ってことね」
 ツカサの手が離れた瞬間に手首がヒヤリとした。
 館内は暖房がきいていて寒くはないのに。室温以上にあたたかい手が離れて、手首が寒いと訴えた。
 その手首をそっと右手で包むと、右手のほうがもっと冷たかった。
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