ホワイトタイガー
それから何日か後、偶然にも町でホワイトタイガーさんを見かけた。

あの時と全く同じ格好だったのでスグに気が付いた。と、いうよりも私の関心事がホワイトタイガーさんで一杯だったというだけなのかもしれない。

一緒にいる人の手前、声は掛けなかった。それからさらに上の空で、私の頭の中はホワイトタイガーさんの事で一杯になった。


その後、月に薄く雲がかかるような夜に、また彼を見つけた。

人でごったかえす橋の真ん中を彼は1人で歩いていた。もちろん同じ格好でだ。

今度は彼も見つけてくれた。

何を話したかは、あまり覚えていない。

彼は基本的なひさしぶりだとか、前にも逢いましたよね的な挨拶や社交辞令の一切を省略してくる人だ。

前にも思ったが、ここまで基本がなってない人もめずらしいように思うし、お腹空いたか? とか何が食べたい? どこに行きたい? カラオケでも行く? というような牽制すらしてこない。

最初の発言が、斜め前を指差して「ああshop99潰れてますね」だ。

そう言った後に手を繋がれて、元shop99のローソンに連れられて入った。

右手を前に突き出すようにかざして自動扉が開く。立ちどまることも歩くスピードも変わらず入った途端にホワイトタイガーさんは鼻歌を歌い出したのだった。

「shop! キュッキュウキュッキュキュキュ

shop! キュッキュウキュッキュキュキュ

あなたのおうちに届けたい~」

「そ~んな気持ちでキュッキュッキュキュ」


http://www.youtube.com/watch?v=jQ10JcKPxKw

歌いながらカゴに、商品もロクに見ないでガサガサとカゴ満タンに雑誌を中心にアイスクリームやお菓子を入れていった。

コンビニでこんなにリズムよく買う人を始めて見た。

普段そんな光景を見たらこの人頭がおかしいのではと思ってしまうのだけど、こうも姿勢良くスッスッといつものことですという風にスマートに買い物をしていく後ろ姿を眺めていると、なにやらベテランの農家のようだ。

洗脳ソングによるモノかもしれない。すこし擦れた小さな声で半笑いで歌うその姿は、地上に降りた天使そのものだった。

7950円の支払いを終えると「半分持って下さい」と彼は言った。

もう、嫌ですとかそういう選択肢はない。

気が付いた時には家までついて行ってしまっていた。

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