私の刑事さん

「ハー…何もしねぇよ」

男は私の反対側にあるソファーに座った。

「…」

部屋に広がる煙草と石鹸の香りが私をすごく安心させた。

昔は、うちも洗剤の香りと、お父さんの煙草と、私と秀ちゃんが採ってきた花の香りが家を包んでいた。

「何で泣く!?」

……

安心したから…?

何だろう…

どうしてここはこんなにも安心するものがあるんだろう……

「俺はまた出ていった方がいいか?」

「…っ…ふぇっ…わあああん、わあああ…ぅわあああん…」

初めて人前で泣いた。

初めて安心した。

全部全部初めてだ。

「…」

男は私に何も言わず、ただずっと煙草を吸ってた。


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