もう一度、君にめぐり逢いたい〜ちっさいおじさんが起こした奇跡⁎⁺˳✧༚
沙也香と別れてから、瑞希と2人でバスに乗る。


「私、もう沙也香には何も言わないっ」


やわらかい西陽が射す中央の座席で、瑞希がため息混じりに呟いた。


「そっかぁ……」


「優衣、なんかあった!?」


「えっ、なんで? 別に何もないよっ」


「それならいいけど……。じゃあ明日ねっ、バイバイッ」


「バイバーイ」


そして次の停留所で、優衣もバスを降りる……。


「あっ、綺麗! おじさん見て、凄ーく綺麗だよっ」


おじさんは、ポケットの中から外を覗いた。


『オーッ! ユイ、空が赤いネッ』


「うん……」


『ユイ、悲しいのカイ?』


「えっ、どうして?」


『ユイの瞳も赤いネッ』


「……おじさ〜んっ」


おじさんはもう何も言わずに、ただ、夕焼け空をうっとり見つめている。


優衣は涙がこぼれないように、その空を見上げた。
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