銀棺の一角獣
 床に倒れ込んだアルティナの頭の中に流れ込んできたのは、何百年も前の記憶。

 なぜ一角獣が銀の棺におさめられることになったのか――そして代々の国王がどのようにして棺を守ってきたのか。

 その中に父の記憶もあって、アルティナの目から涙がこぼれ落ちた。父は王宮から離れた戦場で亡くなったから、最後の声を聞くこともできなかった。こうしてスウェインの力を借りて会うことができた。


「……父もこうして記憶を受け継いだのですね……」


 小声でアルティナは言う。スウェインは微笑んだ。


「お疲れになったでしょう。薬草茶でもいかがですか」

「いただくわ」

「それをお飲みになったら、みなさんのいらっしゃるお部屋にご案内しましょう」


 スウェインは立ち上がった。蝋燭の光がゆらめく部屋の中、アルティナは一人残される。

 受け継いだ記憶は、あまりにも重かった。代々の国王が、どんな想いをもって棺を守ってきたのか――信念を持って記憶を受け継いできたことをアルティナは知る。
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