銀棺の一角獣
「少し早すぎたがな。おかげで俺の回復は半端なままだ。まあ封印を解かなければあいつは棺を破壊するつもりだっただろうし、ちょうどいいと言えばよかった」


 ぶるぶると一角獣は首を振る。


「だから逃げたのか?」


 ルドヴィクの声が厳しさを増した。


「正面からやり合ってかなう相手ではないだろうが。あっちも完全には復活していないが、こっちも完全じゃない。あの場にとどまるのは賢明じゃないさ」


 変わったルドヴィクの声音には気づいているのかいないのか、一角獣はゆったりと尾を振る。


「――フォークレーア神殿にはこうやって入れば傷を癒す泉があるんだ。だから泉に駆け込んだ。神官がアルティナを呼びに行ったおかげで、ライオールまで連れてきたからな」

「――アルティナと、ルドヴィクはともかく、僕まで連れてくる必要はあった?」

 キーランが話に割り込んだ。


「キーラン様は――次の器なの」


 小さな声でアルティナは言った。
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