銀棺の一角獣
「お二人はお食事を――あの女性なら大丈夫でしょう。一角獣のことをアルティナ様が彼女に話したとはライオール陛下も思いますまい」


 堅苦しい口調でそう言った彼は、周囲の警戒に立つと付け足してその場を離れた。


「……彼、僕に気を使ってる?」

「……あなたは、わたしの婚約者ですもの」


 通りがかった村で買い求めた保存用のパンはとても堅い。苦労してそれをちぎったアルティナは、ゆっくりと口に運んだ。


「父が強引に押しつけた――が正解だろう? ああ、困った顔をしないで。そんな顔をさせるつもりじゃないから。彼に気を使わせているのだったら申し訳ないと思っただけなんだ」


 君と彼は愛し合っているのにね、と彼は言葉ではなく軽く肩をすくめる仕草で表して見せた。


「彼には彼の考えがあるのでしょう」


 そう返すことしかできなかった。三人の関係は複雑だ。

 けれど、今はそれどころではないのもわかっている。キーランとの婚約を破棄するつもりはない。少なくとも、アルティナの側からは。
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