銀棺の一角獣
「……アルティナ」


 周囲にいる人の目も気にしないで、キーランはアルティナを抱きしめる。彼の手が緩やかにアルティナの髪を撫でた。

 まっすぐに流れ落ちる銀の滝を彼の指がすくい上げて、落とす。それからアルティナの額に唇を当てて、彼はアルティナを自由にした。


「君も――無理しないで。これから先、何があっても僕は君の味方だから。父を敵に回すことになっても――だから、笑って見送ってほしいな」


 アルティナは微笑みを作ろうとする。その顔はこわばってしまって、うまく笑えているかはわからなかった。


「それじゃ、行ってくる。『魂鎮の儀』とやらがうまく行くことを祈ってて」


 迎えにきたジャファールについて、キーランは城を出ていく。最後にもう一度だけ振り返って、アルティナに手を振った。
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