銀棺の一角獣
 その夜は何事もなく明けた。急ぎで朝食をすませた後、ジャファールがキーランを迎えにくる。

 今日の彼は綺麗に正装していた。昨日は宝飾品は一角獣を彫り込んだベルトだけだったが、今日は首回りに金の首飾りを下げている。

 間に合わせであるが、キーランにもきちんとした衣服が揃えられていた。茶の上着に灰色のズボン。上着より濃い茶色のマントをかけている。


「――それじゃ、行ってくる」


 王宮の入り口に立って、キーランは見送りに出たアルティナに微笑みを向けた。


「……キーラン様」


 その微笑みがまぶしくて、アルティナは視線を落とす。


「そんな顔、しないで。これは僕たちの国の問題でもあるのだから」


 右手がとられた。そのまま引き寄せられて、キーランの腕の中にすっぽりとアルティナはおさまってしまう。

 彼女は、そのまま身をほどこうとはしなかった。キーランの肩に額を預けて、彼のなすままになっている。
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