銀棺の一角獣
「それならよかったわ。わたしたちもすぐに発ちましょう」

「門前で待っている」


 アルティナは大急ぎで動きやすい服装に着替え、昨夜のうちにまとめておいた荷物を手にした。腰に短刀を挟む――これがどのくらい役に立つのかはわからないけれど、ないよりはきっとましなはずだ。

 まとめた荷物を手に、急ぎ足に廊下を進む。どこからともなく表れたグリアが、小さな籠を手にアルティナに従った。


「ティレル! 行きましょう」


 王宮の扉を出るなり、アルティナは叫ぶ。

 ティレルは馬具をつけて、アルティナが出てくるのを待っていた。なじんだ動作でアルティナはティレルの背にまたがる。


「アルティナ様、これをお持ちください――昼食です」


 グリアがアルティナに持っていた籠に入れてきた袋を手渡した。アルティナは鞍にその袋をくくりつける。


「ティレル殿――アルティナ様をよろしくお願いいたします」


 デインはティレルに向かって深々と頭を下げる。
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