銀棺の一角獣
 目を閉じて、背もたれに背中を預ける。

 彼女の乗っている馬車の後ろに、もう一台馬車が続いているはずだ。そこには厳重に包まれた銀の棺が載せられている。

 棺を外へと引き出した時、雷に打たれるのではないかと予期して身を堅くしたのだけれど、そんなことはなかった。

 棺の中に眠るという一角獣が、本当に守り神ならばこんな扱いを受けて黙っているはずはない。

 こんなものを欲しがって戦争を起こすなんて。ライオール王が欲しがっている棺の中身が何なのかなんて、真実が何であろうと気にならなかった。

 憤りを感じても、何もできなくて、あまりにも無力だ。

 少しでも体力を温存して、ライオール王の前に立つ時は毅然とした態度をとるように心がけねば。

 侍女たちが揃えてくれたクッションを並べ直し、アルティナはそこに身を落ち着けた。
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