銀棺の一角獣
魂鎮の儀
 日が高くなった頃、アルティナはティレルがもぞもぞ動いて起こされた。空の胃がしくしくと痛む。


「……もう大丈夫。行きましょう」


 こわばった身体をほぐして立ち上がる。ティレルに乗るのにルドヴィクが手を貸してくれる。

 眠っていないはずなのに、ルドヴィクは疲れた様子など見せずにアルティナの前に立った。

 彼の馬は側に生えていた草を食べたらしく、機嫌がいいのがアルティナにもわかる。

 馬にまたがったルドヴィクは、ティレルに全てをゆだねているらしく、アルティナの方は見向きもせずに馬を進ませる。

 アルティナは何も考えずにティレルに座っていればよかった。


「……まさか、あの村の人たちが敵に回っていたなんて思わなかったわ」


 それを言えば気にしてしまうだろうから――ルドヴィクには言えなかった。

「俺も気づかなかった。人の心を読む術までは持ち合わせてないからな――」
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