銀棺の一角獣
「……熱があるじゃない」


 ティレルから滑り降りて、アルティナはルドヴィクの額に手をやる。


「大丈夫です。よくあることですから」


 ルドヴィクは微笑んで、野営の準備にとりかかる。アルティナも水をくみに走った。

 一つしかない食器を分け合って簡単な夕食を終え、アルティナは毛布を手に取った。


「……一緒に寝ましょう」


 アルティナは毛布を手にして、ルドヴィクに近づいた。気候がいい時期とはいえ、夜になれば冷え込む。


「それはいけません」


 ルドヴィクは、アルティナを制した。


「……毛布は一枚しかないから。冷え込むでしょう」


 アルティナはルドヴィクの肩に手をかける。昼間、唇を触れ合わせたことを思い出して、アルティナの胸が震えた。


「アルティナ様」


 彼の胸に手を置くと、困ったようにルドヴィクは首を振った。
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