銀棺の一角獣
リンドロウムの森
 ルドヴィクの馬は失われてしまったから、ティレルに同乗するしかない。アルティナの後ろに彼は乗って、彼女の腰に腕を回す。

 アルティナは彼の腕の感覚にどきどきしながら、鞍に掴まった。


「ティレル殿、お願いする」


 ふん、とティレルは鼻を鳴らすと歩み始めた。アルティナは彼の振動に身を任せる。


「……傷は?」


 背後にいるルドヴィクにたずねると、彼は大丈夫だと返す。


「リンドロウムの森までは、あと二日ほどで着くはずだ。何もなければ、だがな」


 ゆっくりと歩みながら、ティレルは言った。


「何もないことを祈りたいな」


 ルドヴィクは小声で言う。アルティナはそれに返事をしなかった。身体に巻き付く彼の腕の感覚だけが頼りになるように思える。

 追っ手を振りきることができて、アルティナはほっとする。

 夕方になるころ、ティレルとルドヴィクはまた野営の場所を見つけた。
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