銀棺の一角獣
 夫となる人の側にいてもきっと、ルドヴィクへの想いが溢れてしまう。それほど自分の意志が強固だとはアルティナには思えなかった。

 ライオールと対峙するのが怖くて、かの国に何が待っているのかわからなくて、恐ろしくてルドヴィクの同行をもとめたけれど――本来はそうするべきではなかった。

 アルティナが女王として振る舞うのならば。


「そうね、あなたの言っていることは正しいわ。わたしも、あなたも――それほど強くない」


 このままキーランに嫁いだ後も、ルドヴィクが側にいたら――きっと越えてはいけない線を越えてしまう。


「そうしましょう。わたしは……キーラン様に忠実であるって……そう、誓ったのだから」


 心を殺すことができないのは、わかっている。きっと嫁いだ後も折に触れてルドヴィクのことを思い出すだろう。彼を心から追い出すなんて一生できない。
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