銀棺の一角獣
三年後
 それから三年が過ぎて、アルティナは二十歳になろうとしていた。国を立て直すのに必死で、いまだ一人のままだ。

 早く後継者を――という声はないわけでもなかったのだけれど、アルティナは全て退けていた。


「アルティナ様――お手を」


 アルティナはこの日、白のスカートに桃色の胴着のドレスを身につけていた。スカートはふわりと広がっていて、アルティナの動きに合わせて軽やかに揺れる。

 髪は細心の注意を払って結い上げられていた。そこに金と銀の細工にアルティナの瞳と同じ色の紫水晶をあしらった冠を載せる。客人を迎えるための最高の装いだった。


「キーラン様は、そろそろ?」

「あと数分で馬車が到着するようです」


 アルティナは手を差し出した。彼女の手を預かるのは、ここ数年常に忠実に使えていたルドヴィクだ。
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