銀棺の一角獣
 この国に入ってからも、アルティナとルドヴィクの間にある特別な絆を壊そうとはしなかった。


「おはよう……今日、棺をディレイニー王国に引き渡します。昨夜は一晩中工事が行われていたようだけど、皆はよく眠れたのかしら?」


 これ以上、皆の前で気弱なところを見せるわけにはいかないと、アルティナは必死に明るい表情を作ろうとする。


「我々のいた棟までは物音は届きませんでしたので――女王陛下」


 ルドヴィクがあえて堅い口調を作っているのはわかった。それを当然のこととアルティナは受け入れる。

 国の守り神を敵国に渡す。大罪を犯そうとしているアルティナにどこまでも従うと彼は約束してくれた――忠実なる騎士として。それだけで十分だ。

 女王としての威厳を取り繕って、彼女は騎士たちを促す。


「それでは、行きましょうか。ライオール王が何のために棺を望んだのかは知らないけれど」


 アルティナを先頭に、全員そろって部屋を出た。礼儀正しくケイシーが頭を下げて、彼女たちを見送る。
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