銀棺の一角獣
「棺に用はない。わたしが望むのはその、中身だ」


 ライオールはアルティナを指さした。


「棺の封印を解け。さもなくば――」


 彼の視線が、集まったディレイニー貴族たちの向こう側へと向く。壁際に一列に並んでいるのは、アルティナが自国からともなった騎士たちだった。


「そこまで愚かではないだろう?」

「……父上!」


 キーランは父に向かって非難の声を上げる。押し殺したそれはとても小さくて、広間に集まった人たちの大多数には届かなかっただろうが。

 アルティナの視線が揺らぐ。彼女のいる場所からは、騎士たちの様子を窺うことはできなかった。

 ためらうアルティナにライオールはじれたようだった。


「――剣を抜け!」


 彼の命じる声に、室内にいた兵士たちがライディーアの騎士たちへと近づいた。剣を抜いて。騎士たちに刃向かうすべはない。彼らの武器は、この国に入った時に全て取り上げられている。

< 46 / 381 >

この作品をシェア

pagetop