銀棺の一角獣
一角獣
「棺の封印を解いてもらおうか」


 キーランに身体を預けていたアルティナは、思いがけない命令に目を見張った。棺には、アルティナには読み解くことのできない文字を記した布が張りつけられている。歳月によって変色したそれを、今まで剥がそうとした者はいなかった。


「……できません」


 身体に巻き付いているキーランの腕を外し、アルティナはライオールを睨みつけた。それが精一杯の抵抗だった。


「できぬ、と?」


 ライオールは片方の眉を上げる。それから、やれやれというようい大仰な仕草で首を振った。


「もう少しかしこい娘だと思っていたのだがな」

「……棺を我が国から持ち出しただけで十分でしょう。他に何をお望みなのです?」


 この中に何が収められているのか、本当のところは誰も知らない。長年の間、こうやって封印されてきたものを自身の手で解くことなど考えてみたこともなかった。

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