銀棺の一角獣
「君にはつらい光景になるだろうけれど――僕の言いたいいことはわかるね?」


 キーランの言葉にアルティナは頷いた。


「……大丈夫です。扉を……開いてください」


 髪を結ってもらう余裕もなかった。肩から背中に流したままの髪を、払いのけてアルティナは穏やかな微笑みを浮かべようとする。

 彼らの前で疲れた顔を見せるわけにはいかないから。


「――ミラール! マドレル! ヴァルガス! セサル……ルドヴィク」


 生き残りの騎士たちの名前を、アルティナは一人ずつ呼んだ。彼らは鎖につながれ、その鎖の先は壁につながれている。鎖の長さはそれほどではなく、壁から距離を取ることはできない。鎖に接している肌は、擦れて血がにじんでいた。


「……よく生き残ってくれました」


 ようやく絞り出した言葉はそれだけだった。


「……陛下をお守りすることができず……申し訳……」


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