銀棺の一角獣
 ミラール、と呼ばれた一番年かさの騎士が、よろめきながら体勢を変え、アルティナに向かって頭を下げた。


「いいえ。あなたたちが無事で、本当によかったと思います」


 ここに来るまでにキーランに聞いていた。彼らは強情で、傷を負ってもなおアルティナを救出することをあきらめず、仕方なく鎖につないでいるのだと。

 中でもルドヴィクの暴れぶりはすさまじく、ライオールとの戦いで重傷を負ったにも関わらず、見張りについた兵士二人を叩きのめしたらしい。


「……ルドヴィク」


 アルティナはルドヴィクの側に膝をついた。彼はまっすぐ座っていることもできず、奇妙な角度で壁に背中を預けていた。


「……姫……様……」


 彼の声は小さくて途切れがちだった。口をきくのもやっとという有様で、アルティナに向かって騎士の礼をとる余裕もない。

 アルティナをとらわれの身としてしまったことを恥じるように、ルドヴィクは明るい青の瞳を閉じた。


< 72 / 381 >

この作品をシェア

pagetop